【體育會蹴球部】チームファースト。ラストイヤーに責任果たす。小舘太進君[商4/CTB]
茗溪学園から慶應義塾へ入学し、現在商学部4年生の小舘太進君のインタビュー記事をご紹介させていただきます。
著者は、元ラグビーマガジン編集長の田村一博氏です。(引用元:https://www.justrugby.jp/check-it-out/2025/06/23/6410)
この春は関東大学春季交流大会の4試合に加え、早大との招待試合、同志社大との定期戦にも出場した。(撮影/松本かおり) 2025.06.23チームファースト。ラストイヤーに責任果たす。小舘太進[慶大4年/CTB]
田村一博
この春は13番を背負い続けた。
大学生活も4年目。ラストイヤーに懸ける思いは強い。慶大の4年生、小舘太進(こだて・たいしん)は、関東大学春季交流大会Bグループでの5試合すべてに先発出場を果たした。
チームは5試合を戦って3勝2敗。6チームの同グループ内で2位となった。6月15日に慶大・日吉グラウンドで戦った青山学院大戦との試合が、春季交流大会の最終戦だった。
小舘は、その試合にも先発して後半31分までプレー。チームが24-28と競り負ける中でも、173センチ、84キロのCTBは自分の役割に集中した。印象に残ったのは前半18分過ぎのプレーだ。アタックで好判断を見せた。自陣ゴール前でFWがターンオーバーしたボールがBKに渡る。タッチに蹴り出したいシーンだっただろうか。
しかしキッカーに圧力がかかっていると感じた小舘は仲間を呼び、ボールを手にするとインゴールから果敢に攻める。WTBの伊吹央のビッグゲインを呼ぶ好判断だった。敗れたものの、青山学院大戦でも好タックルを見せた。(撮影/松本かおり) 後半13分頃にはディフェンスで見せた。
フェイズアタックの途中、その日は黄色いジャージーを着た相手の15番に突き刺さり、仰向けに倒した。デコイランナ―の裏を走ろうとした相手をしっかりとらえた一撃には味方も続き、相手の反則を誘う。ボールを取り返した。試合を終えた小舘は、「今週1週間、ディフェンスにこだわってやってきましたが、前で止めることができたにもかかわらず、ターンオーバーできる場面がなかなかなかった」と戦いを振り返った。
「ブレイクダウンのこだわるところや、一人ひとりのタックルのクオリティーを夏合宿で磨いていく必要があると思いました」1、2年時の小舘は、関東大学対抗戦への出場機会がなかった。3年生になった昨シーズン、筑波大戦への途中出場でデビューを果たすも、3年間で公式戦はその試合だけ。
もっとプレーしたい。そして、チームへの貢献を誓う。「外のディフェンスと、セットプレーの1次からのボールキャリー。最終学年になって、自分に求められる役割は明確になっています。分かりやすく役割をもらっているので、シンプルに、そこにフォーカスできている。それが、ここまで出場できている要因かな、と思っています」と自己分析する。
「ただ展開していきたい時に、あまり(アタックに)関われていないところがある。(この先)ボールを動かしていくことになったとき、自分の目立てる場所というか、そういうときにも輝いていける場所を、夏合宿から秋にかけて探していきたいと思っています」
茗溪学園出身も、郷里に電話をすれば、すぐに津軽弁に戻る。
青森の弘前出身。5歳の頃、弘前サクラオーバルズの前身、弘前ラグビースクールに入り、中学まで在籍した。
ただ、ラグビースクールの活動は週1のため、熱中していたのはサッカー。こちらはクラブチームでほぼ毎日、練習に励んでいた。高校進学に合わせて故郷を離れたのは、弘前高校、筑波大とラグビー部でプレーしていた父の影響からだ。強豪校のラグビー部にチャレンジする気持ちが湧いた。
高校時代は花園にも出場。寮生活での3年間を「すごく楽しかったし、充実していました」と笑顔で思い出す。
「ずっとラグビーのことを考えていました」と言いながらも、寮ではスマートフォンを預けるシステムもあり、勉強する時間も友人関係を深める機会もあった。学生ラグビーにおいて4年生が果たす役割は大きい。チームの中での存在感は、自分がどういう姿を見せるかによって大きく変わる。
そして、それがエナジーとなってチームを前に進めることにつながる。小舘は、これまで見てきた先輩たちの背中を例に出して言う。
「これまで好きだった先輩たちは、最後の最後まで試合出場にこだわっていました。僕自身、そういう先輩たちに憧れてきました」茗溪学園出身。173センチ、84キロ。商学部に学ぶ。(撮影/松本かおり) 自分も同じように生きたい。
春は出場機会を得られていても、それが夏、秋冬のシーズンが深まった時のことを約束するものではないことも分かっている。同期の主将と副将(今野椋平と山本大悟)は同じポジション。レギュラーとして試合に出続けることは簡単でない。高いハードルを越えるには、「自分の役割をシンプルに、愚直にやり続ける以外にない」と理解して前を見続ける。「自分は負けていない」と自信を胸に、ハードワークし続ける。
強みと認識する「前に出るディフェンス」を磨き続けるつもりだ。先の青山学院大戦、先発に4年生は6人だけだった。若い力を頼もしく思う一方で、最上級生がもっと強くチームを引っ張っていかないといけないとも思っている。
「夏合宿など4年を中心に、本当にきついことに前向きに取り組み、大きく、強くなり、たくましい姿で秋を迎えないといけない。そして一戦一戦勝っていって、今シーズンの目標としている日本一に挑戦したいと思っています」青学大に敗れた直後のクールダウン時、バックス陣で話し合った。
「フォワードが頑張ってくれている時間帯、バックスが簡単なミスをして、体を当てられなかったところもありました。バックスはフォワードに比べると4年生が多く、引っ張っていかないといけないのに、チームを勢いにのせるようなプレーができなかった。そういうメンタリティの部分をもっと高めていかないと」最上級生の中には、主将や副将を中心に、活発に意見をいい合える空気がある。時にはヒートアップすることもあるが、実際にプレーした体感をもとに話し、切磋琢磨できているいまは、出場できずに悶々としていた頃より毎日が熱い。
後輩たちに、ああいう生き方をしたいと思われるように日々を過ごせば、きっと結果はついてくる。