慶大“起死回生返し”でドロー 2点ビハインド延長12回2死から2年生が同点三塁打

■8回から救援の慶大・広池、明大・大川が一歩も譲らぬ投げ合い
東京六大学野球春季リーグは27日、明大-慶大2回戦が行われ、延長12回の末7-7の引き分け。明大の1勝1分で、決着は28日の3回戦以降に持ち越された。前日(26日)の1回戦では明大が劇的な9回逆転勝ちを収めていたが、この日は逆の展開。延長12回裏2死、2点リードされていた慶大が中塚遥翔外野手(2年)の2点三塁打で追いついた。
ともに8回から登板した両速球派右腕の投げ合いは、実に見応えがあった。慶大はこの回の守備で5-5の同点に追いつかれ、なおも1死一塁のピンチが残ると、守護神の広池浩成投手(3年)をマウンドへ送った。その裏には、明大の4番手として大川慈英投手(4年)が登板。2人は一歩も譲らず、スコアボードに「0」を並べていった。
特に広池には「どうしてもリベンジしたい」という強い思いを抱いていた。前日、チームは2-1とリードして9回の守りを迎えたが、2死一塁から適時三塁打を浴び同点。ここでバトンを渡された広池は、2球目を右前打され逆転サヨナラ負けを喫したのだった。「僕は昨日2球しか投げていませんが、試合が終わってからずっと悔しさが渦巻いていました。夜には球の出どころを修正したいと思い、シャドーピッチングをしてから寝ました」と明かす。
ただ、先に均衡を破られたのは、この日も広池の方だった。延長12回、先頭打者に死球を与え、次打者の投前への送りバントもファンブルしピンチを広げてしまう。結局1死二、三塁から、前日サヨナラ打の田上夏衣外野手(2年)にまたもや勝ち越し左犠飛を許した。さらに暴投も重なり、決定的とも思える2点を失った。
「勝ち越されたのは、自分の弱さが出たからです。その裏の最後の攻撃では、打席に入る1人1人にベンチから『頼む!』と声をかけていました」と広池。これに打線が応えた。2死一、三塁とし、2年生の5番・中塚が左打席に立った。カウント0-1から、149キロを計測した大川の外角高めのストレートをとらえると、舞い上がった打球は“逆方向”の左翼フェンスを直撃。2人の走者が生還し同点となった。ベンチにいた広池はこの瞬間から、安堵の涙が止まらなくなった。
■寮で同室だからこその予感「ストレートなら絶対打つ」
実は殊勲の中塚と広池は、寮の4人部屋で同室。広池は「めちゃくちゃ仲がいいです。もともとは、すごく静かな部屋だったのですが、中塚が入ってきてからにぎやかになりました」とおどけ、「こいつは得意のストレートなら絶対打つだろうと思っていました」と付け加えた。
中塚は智弁和歌山高1年の夏に、チームが全国制覇。当時はベンチ外だったが、2年の夏に8番打者、3年の春の選抜では4番として甲子園に出場している。
大学1年の昨年はあまり目立たなかったが、堀井哲也監督は「もともとスイングの強い打者で、今年2、3月のオープン戦の打撃内容が非常によく、ミートする確率が上がってきました」と評する。今季開幕カードの立大戦3試合では4番に抜擢されたが、計11打数2安打といまひとつ結果が出ず、このカードでは5番に下がっていた。
高校時代に大舞台を経験していることも、ここぞの場面で打てた要因の1つだろうか。中塚自身が「性格的に浮き沈みするタイプではないので、平常心でいられるのかなと思います」とうなずいた。
前日は逆に、明大先発の毛利海大投手(4年)が、援護のない中で6回を2失点に抑え降板。味方打線が土壇場の9回2死一塁から試合をひっくり返すと、思わず感激の涙を流した。“涙の応酬”となり、広池は「僕もめちゃくちゃ泣いてしまいましたが、みんな感情が忙しいですね」と苦笑した。まるで夏の高校野球のような熱い戦いが続いている。