2016年度理工学部同窓会総会・特別講演会報告
2016年10月16日(日)、好天に恵まれた初秋の日曜日、2016年度連合三田会が開催されました。同日午後、日吉キャンパスJ11教室にて理工学部同窓会総会および特別講演会が開催されました。今年度は特別講演の時間を例年より長めに取ったために、総会の開始は12:30となりました。落合会長の挨拶・理工学部同窓会の近況報告に続いて、小尾副会長から昨年度の事業報告がありました。また今年度、同窓会奨学生に選考された学生10名の紹介がありました。
13:00より総会に続いて行われた特別講演は、前塾長で、現在、独立行政法人日本学術振興会理事長の安西祐一郎氏による「認知科学研究40年-その先に見えるもの-」という演題で行われました。認知科学は安西氏の専門分野であり、非常の多くの研究成果が知られています。OBおよび現役学生合わせておよそ200名が会場に集まり熱心に講演を聴講していました。
講演では認知科学とは何か、心の働きとはどのようなものかという話から始まり、心のメカニズム、創造、感動などについて言及されました。現在、脳科学として行われているのは、脳をハードウェアとして扱った場合の研究が主流です。心のソフトウェアはハードウェアからどのように生まれてくるのかについては未解決であり、今後も認知科学は様々な分野の研究において重要な位置づけとなることを強調されていました。
認知科学の研究としては、1950年代からMIT、スタンフォード大学、エジンバラ大学、カーネギーメロン大学がすでに行っており、世界的にも進んだ研究を行っているようです。安西氏は1970年代にカーネギーメロン大学に留学し、ハーバート・サイモン教授のもとで認知科学の研究を行っていた時のことを、思い出も含めてお話しいただきました。ハーバート・サイモン教授はのちにノーベル経済学賞を受賞し、認知科学以外に心理学・経営学・政治学・社会学などの研究を行いました。そのことからも認知科学が多くの分野に係る重要が学問であることがうかがわれます。
講演の途中で、人間の認知がどのようなものかを示すために、情報の分野で有名な「ハノイの塔」の話を持ち出し、実際の模型を使ってハノイの塔の問題解決をする実演を行いました。問題解決の過程で認知が行われているこを「Learning by Doing」の理論なども含めてわかりやすく説明いただきました。
認知科学が現在どのような分野で利用されているかについて説明し、最後に認知科学の研究の先にどのようなものが見えるかについて、安西氏の私見をお話しいただきました。すでに社会組織、医療介護、教育、デザイン、科学技術など非常に多くの分野で、認知科学の研究がお行われています。今後も分野を超えたオープンイノベーションを許容する社会として発展させたい意見をいただき、一時間以上に渡った講演会を終了しました。
安西氏からはユーモアを交えながら講演を行っていただきましたが、聴衆は話を聞きもらいしてはいけないということで、終始真剣な面持ちで聴講しているようでした。